新緑が美しい季節になると、不思議と“軽やかな味わい”のお茶が恋しくなります。
けれど、ふと疑問に思うことがあります。
緑茶、紅茶、烏龍茶。
色も香りも、まったく違う。
それなのに、実はすべて同じ茶葉からつくられている。
メルチェコレクションでは、月に1回「ALTHAUSティーコラム」をお届けしています。
第16弾となる今回は、 “同じ茶葉なのに、なぜ味が違うのか?”という、お茶の本質について。
製法という視点から、お茶の奥深さを紐解いていきます。
すべては、ひとつの茶樹から始まる

世界中で親しまれているお茶の多くは、「カメリア・シネンシス(Camellia Sinensis)」
という茶樹から生まれています。
さらに、インド・アッサム地方を原産とする 「カメリア・アサミカ(Camellia Assamica)」という品種もあり、この二つが、お茶の世界の大きな基盤となっています。
シネンシス種は、中国や日本、ダージリンなどの冷涼な地域で育ち、繊細で上品な香りを持つことが特徴。
一方、アサミカ種は、インドやスリランカ、ケニアなどの温暖な地域で育ち、力強く、濃厚な味わいを生み出します。
けれど、緑茶になるか、紅茶になるか。
その違いを決めているのは、 “品種”だけではありません。
① 味を変えるのは、「酸化」という工程
お茶の味わいを大きく変えるのが、「酸化」と呼ばれる工程です。
これは、切ったリンゴが時間とともに茶色く変わっていく現象とよく似ています。
茶葉もまた、摘み取られたあとに空気へ触れることで、少しずつ色や香りが変化していきます。
この酸化を止めるか、進めるか。
その違いによって、緑茶・烏龍茶・紅茶という、まったく異なる個性が生まれるのです。
② 緑茶は、“酸化させない”お茶

緑茶は、摘み取ったあとすぐに加熱し、酸化を止めてつくられます。
日本では蒸す製法が一般的で、みずみずしく、青葉のような爽やかな香りが特徴です。
一方、中国では、釜で炒る製法が多く使われています。
ほんのりと香ばしく、やわらかな余韻を感じる味わい。
同じ緑茶でも、製法によって印象は大きく変わります。
③ 烏龍茶は、“途中まで酸化させる”お茶
烏龍茶は、緑茶と紅茶の中間のようなお茶です。
酸化を途中で止めることで、爽やかさと深み、両方の魅力を持っています。
軽やかで花のような香りを持つものもあれば、しっかりとした焙煎香を感じるものもあります。
その幅広い表情こそ、烏龍茶の面白さなのかもしれません。
④ 紅茶は、“しっかり酸化させる”お茶
紅茶は、茶葉を揉み込み、空気としっかり触れさせながら酸化を進めていきます。
その過程で、茶葉は赤褐色へと変わり、甘みやコク、豊かな香りが引き出されていきます。
アッサムのように力強いもの。
ダージリンのように繊細で華やかなもの。
同じ紅茶でも、産地や品種によって、その個性はさまざまです。
製法は、“味の設計図”でもある

お茶は、ただ植物を乾燥させたものではありません。
どの葉を摘むのか。
どのくらい酸化させるのか。
どの温度で乾燥させるのか。
その一つひとつの工程によって、香りや余韻、飲み心地まで変わっていきます。
だからこそ、お茶はとても繊細で、奥深い。
そして、同じ茶葉から、これほど多彩な世界が生まれるのです。